“子どもとテレビをはじめとする電子メディアの関わり”
というのは子育て世代にとって常に関心があるテーマかと思います。
最近だと、家事の間や外出先でおとなしくしてほしい時に
YouTubeなどの動画を視聴させるといった「スマホ育児」なんて言葉も出てきて、
その是非がよく議論されています。
私も子どもが2人いますので、ときどき動画サービスに頼って
自分のことを進めたりすることがありますが、
果たしてそれがいいことなのか悪いことなのか、
ルールを作るにしてもどんなルールを作ればいいのか
そういったことの根拠になる資料はなかなかない状況です。
(ネット記事はたくさんありますが、その根拠は示されていないことが多い)
そんな中、小平さち子氏による
“子どもとメディア”をめぐる研究に関する一考察~2000年以降の研究動向を中心に~
(NHK放送文化研究所 放送研究と調査2019年2月号より) リンク
という、過去の研究論文をもとに作られたレポートに出会うことができましたので、
今回はその紹介です。
小学生以上では社会的ルール違反傾向の高まりの要因の一部となり得ることや、
2歳以下では視聴中の親子の会話により言語発達を促す可能性がある
などの効果に触れています。
興味がある方はぜひ読み進めてみてください。
これまでの子どもとメディア研究
日本では1953年のテレビ放送開始時から、テレビが子どもたちの生活の規律を乱し、
勉強や手伝いをしなくなるのではといった懸念への関心が高かった。
- 1950年代後半~ 子どもの生活行動や性格形成等への影響の研究
- 1970年代~ 番組内容の内容分析、子どもの映像理解の研究
- 1990年代~ 多メディア化・家庭環境の変化が進む
といった流れを経て2000年以降、メディアの教育的な効果の検証が注目されるなど、多様な側面の研究がおこなわれている。
メディアの影響を明らかにする調査・研究
小学生以上を対象とする研究
東京40㎞圏内721人の小5と保護者に対し、4年間(年1回)の訪問面接による青少年のテレビメディアの影響調査を行った。
その結果テレビの暴力シーンを容認するようになるなど、
テレビを中心とするメディアも、思春期特有の不安な気持ちや
社会的ルール違反傾向を高める要因の一つに含まれていると示された。
また、小中学生が実際に接しているテレビ番組とテレビゲームから、
その中で触れる攻撃性、攻撃に対する規範意識、社会的望ましさについて
同じ対象に年を変えて同じ質問する調査では、
暴力の被害描写が非現実的に描かれていることで、
子どもたちの攻撃性などに好ましくない影響が出ていることが明らかになった。
さらにその悪影響について、
その描写の特徴などを学ぶための授業を用意し、
理解が進むことで、攻撃性などが低下するかを試したところ、
教師より解説を受け、子ども自身が映像の特徴分析を体験した場合に
共感性などの伸びが多くみられ、授業の効果が検証されたとしている。
乳幼児対象の研究
1999年にアメリカ小児科学会が
“乳幼児のテレビ接触・視聴については2歳以下の子どもにテレビをみせることは推奨できず、年長児でも1日1~2時間以内の教育的な番組の視聴にとどめるのがのぞましい”
と提言している。
これは視聴の内容ではなく、視聴時間が長いことで、
親をはじめとする人間同士の交流の時間を奪う恐れがあるとの推測から行わたものである。
また川崎市で誕生した0歳児のいる1,368世帯を対象に、
毎年同時期にメディア接触や家族環境などについての質問を継続的に行う調査がされた。
その結果、0歳~5歳時点まででは、
親自身のテレビ視聴時間や、母親の子育てに対するストレスの高さなど
複数の要因が子どものテレビ接触・視聴時間に影響を与えていることが分かった。
0歳~2歳においては
テレビ視聴中の親子が見ている内容について会話することが、
言語発達を促す可能性示唆する結果も出ている。
3歳時点では、母親とテレビを一緒に診たり、
子どもの視聴をコントロールする関わりが多いほど、
子どもの協調性や共感性が高いという傾向が出ている。
別の調査として、
乳幼児が映像の世界と現実の回をどのように認識しているか
を調査した実験研究があり、
5~6歳ぐらいまで、映像の世界を現実視するような反応が見られた。
まとめ
以上、稚拙ながらレポート内のテレビ視聴が子どもに与える影響について書かれた部分を抜き出してみました。
親子がテレビを一緒にみて会話することが、乳児期の言語発達を促すという可能性が示されている一方、
子どもの成長の過程において、攻撃になるなどの悪影響が出る可能性があるともしていました。
ただその悪影響も、その後映像表現に対する理解を深めることで軽減されるなど、
付き合い方ひとつで薬にも毒にもなる、といった印象を受けました。
親がどのような形で子どもにかかわっていくか。
これがテレビ等のメディアを使う上でも重要なのかもしれません。